アウトプットという名の同人誌制作

技術書が頒布される同人誌イベントもコミケ以外に技術書典、技書博(技術書同人誌博覧会)、銭ケット(実業実学書典)などが賑わうようになってきました。

とくに技術書典と技書博は「アウトプットしましょう」と煽っていますが、同人誌としてアウトプットした場合の収支って気になりますよね。

実際に同人誌としてアウトプットした場合の収支を見てみましょう。

印刷

同人誌自体は次の仕様で制作したとします。

項目 概要
サイズ B5版
ページ 120p
印刷方法 オンデマンド
冊数 100冊
その他 表紙フルカラー+本文白黒

印刷代はピンキリなのですがオフセット印刷にすると経費がかかるので安価に抑えるべくオンデマンドを使用します。

印刷数は多くの在庫が残ってしまうと不良在庫になってしまうので販売想定の約1.5倍にするのが良いと思います。

上記、仕様の同人誌を印刷するとおおよそ下記の経費がかかります。

項目 費用
印刷代(税込) 約55,000円
送料(税込) 約2,000円

上記仕様の同人の場合、2箱での配送になります。

イベント参加

イベントへの参加も参加費などが必要です。

下記はコミケへの参加費は約10,000円かかります。

項目 費用
サークル参加申込書セット 1,000円
コミケ参加料 9,100円

技術書典が7,000円、技書博が5,000円です。

そして、イベント会場までの交通費がかかります。

項目 費用
参加交通費 2,000円

イベント1回あたりの経費

新刊を1種類ぶら下げてイベントに参加した場合の経費は約68,600円になります。

項目 費用
印刷代(税込) 約55,000円
送料(税込) 約2,000円
サークル参加申込書セット 1,000円
コミケ参加料 9,100円
参加交通費 2,000円
合計 約69,100円

損益分岐を考える

単純にイベントに1回だけ、新刊を1種類用意して参加すると損益分岐点が約70,000円に位置します。

つまり、70冊以下はイベントに参加して同人誌を頒布するだけで赤字ということです。

そして、原価は700円/冊であり、単価を1,000円/冊とすると利益が300円/冊です。

イベントで全部完売すると約30,000円の利益が発生します。

イベント参加時のその他の経費

イベント参加時は他にも次のような小物も必要になる場合があります。

  • テーブルクロス
  • 本立て・棚など
  • お金入れ
  • 見本誌用のカバー(いわゆる透明のカバー)
  • 売価表示用のシール
  • その他、ポップ用資材
  • 売り子を頼んだ場合は、売り子さんへのお礼など

これらも経費として利益から差し引かなければいけません。

約2,000円/イベントくらいかかります。

売れ残った場合

もし、イベントで同人誌が売れ残った場合は次のどちらかを選択します。

  • 通販
  • 捨てる

通販する場合は同人誌販売業者に委託するか個人通販を選択します。

  • 同人誌委託販売
  • 個人通販

通販方法がどちらにしても、売れ残った同人誌を業者か自宅へ発送しなければいけないのでここでも配送料が発生します。

1箱発送したとして約1,500円かかります。

この地点で1つのイベントに参加した場合の経費は約72,600円です。

損益分岐は若干上がり、約73,000円に位置します。

単価は約730円ということです。

もし、イベントで73冊以上売れなかった場合は、単純に値付けのミスか通販で巻き返しを図らなければいけません。

同人誌委託販売

同人誌委託販売とは店舗や通販で同人誌を委託販売してくれる業者です。

  • メロンブックス
  • とらのあな

委託業者に納品するとあとの販売や発送などは業者が行ってくれます。

手が離れるので便利です。

さて、イベントで1,000円にて頒布されていた同人誌が委託販売時は1,600円ぐらいになっている場合があります。

そのからくりはこういうことです。

同人誌委託販売では販売時に掛け値という形で販売手数料が取られます。

メロンブックスで7掛け、とらのあなで6掛けとなっています。

委託業者にて7掛けで販売する場合、1冊の売り上げは単価1,000円×0.7=700円で300円は業者の手数料になります。

つまり、委託業者でイベントと同じ価格の1,000円で販売したとして7掛けの業者に依頼すると販売自体が赤字になってしまいます。

そこでイベントで販売したときと同じように利益を得ようとするなら販売単価の最低単価は販売単価×0.7=1,000円になるようにします。

販売単価=1,428.57円(繰り上げて1,429円にします)

ここへさらに税金(10%)がかかります。

1,429円×1.1=1571.9円(繰り上げて1,572円にします)

したがって、1,572円がイベントを同じ利益を出せる委託業者での販売価格になります。

そして、購入側は送料がかかります。

メロンブックスで330円(メール便)〜、とらのあなで270円(佐川飛脚メール便)〜、450円(ネコポス)〜が必要です。

購入側はイベントで1,000円にて購入できる同人誌が通販で入手する場合は約2,000円となり、倍の購入コストなります。

BOOTHの場合は「商品価格×3.6%+26円」なので62円/冊となっています。

個人販売

個人販売をする場合は次の経費がかかります。

  • 梱包資材
  • 発送費

梱包部材が約100円、発送費が約200円です。

クリックポストで188円、ネコポスで398円です。

つまり、クリックポストで発送して、約300円の経費がかかります。

ここでは人件費は無視しています。

まとめ

収支は±0円というのがオチなのかもしれない。

結論からすると同人誌として技術書をアウトプットすると金銭もアウトプットすることが多くでしょう。

アウトプットがいけないというわけではなく、アウトプットの矛先を同人誌にこだわる必要はないということです。

本当にアウトプットするのなら、同人誌やイベントに参加するのではなく、Qiitaやブログ、コミュニティーでの勉強会や登壇することをオススメします。

writed: 2020/01/05/ 14:48:51